■論文情報■
タイトル :Subsurface-damaged later in (010)-oriented β-Ga2O3 substrates
著者:Hirotaka Yamaguchi, Shinya Watanabe, Yu Yamaoka, Kimiyoshi Koshi and Akito Kuramata
雑誌:Japanese Journal of Applied Physics
公開年月日:2020年12月2日
DOI:https://doi.org/10.35848/1347-4065/abcb1c
■課題情報■
課題番号:1806043S
実施課題名:酸化ガリウムのX線トポグラフィによる結晶欠陥の解析
BL番号:15
利用報告書
課題番号:2004027S
実施課題名:β-Ga2O3のすべり転位のX線トポグラフィによる観察
BL番号:15
利用報告書(後日掲載予定)
■概要■
酸化ガリウム(Ga2O3)は、次世代のパワーエレクトロニクス材料として注目されています。結晶構造の異なる多形がありますが、そのなかで融液からの結晶成長ができる単斜晶系のβ-Ga2O3は、デバイスの基板となるウェーハを安定に作りやすいという特長があります。これは、同様に新材料として研究開発が進むSiC、GaN、ダイヤモンドにない大きな利点です。現在、4インチ径までのウェーハが市販されており、国内外で、デバイス応用に向けた研究が進んでいます。
ウェーハは、結晶インゴットからの切り出し・研磨等の工程に経て、最終的に歪みのない平坦な表面に仕上げられます。株式会社ノベルクリスタルテクノロジーは、(201)、(010)、(001)の各面を表面方位とするウェーハを供給していますが、これらのうち、(010)面ウェーハは、加工工程に発生した損傷(加工ダメージ)がとくに深く、特別な仕上げ加工が必要であることがわかりました。これは、機械研磨やCMPなどの工程ごとに、光学顕微鏡によって表面状態を、実験室のX線トポグラフィによって内部の歪みを観察し、比較することによって解明されました。現在市販している(010)面ウェーハは加工ダメージ層がほとんど除去されています。
シンクロトロン光によるX線トポグラフィは、結晶欠陥の高分解能な評価を可能にします。一方、加工ダメージも敏感に映し出します。このため、本来の結晶欠陥を評価するためには、加工ダメージのない試料が必要です。本研究では、(010)面ウェーハを熱処理してCMP仕上げすることによって、加工ダメージ層を完全に取り除き、本来の結晶欠陥の観察に成功しました。その結果、β-Ga2O3の結晶欠陥の形態や発生機構の解明に有用な結果が得られました。
■問い合わせ■
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センター
山口博隆 yamaguchi-hr@aist.go.jp
株式会社 ノベルクリスタルテクノロジー
渡辺信也 shinya.watanabe@novelcrystal.co.jp