第2実験ハッチ内の実験定盤上には、4象限スリット、試料ステージ、イオンチャンバー等X線検出器等が設置されており、XAFS測定装置として利用することができます。
BL11 でのXAFS 測定対象元素は、主に「第4周期元素(Ti ~ Kr)のK端」と「第6周期元素(Cs ~ Po)のL端」です。また、高調波抑制ミラーと低エネルギーX 線利用XAFS 計測システムを使用することで、より低エネルギーの吸収端を持つ元素(P ~ Sc等)も、測定可能です。
黄色 :K端
緑 :L端
オレンジ色 :K端(高調波抑制ミラー使用)
水色 :L端(高調波抑制ミラー使用)
BL11のXAFS測定装置で測定できる元素
<分解能>
<試料ホルダー取付け穴>
試料ペレットを貼り付けた35mmスライドマウント(50mm×50mm)を、
ステージに取り付けたFHS-50(シグマ光機)にマウントした例
※ 特殊な形状の試料セルを用いる場合には、その固定方法について事前にご相談ください。
※ in situ 実験等で試料環境装置を持ち込まれる場合には、事前にご相談ください。
入射X線強度用(I0)
透過X線強度用(I1)
リファレンス透過X線強度用(I2)
フロー用混合ガス
イオンチャンバーへのフローガスとして、
の混合ガスを常設しています。これらの組み合わせにより2.1keV ~ 14keVの透過XAFS測定をおこなうことができます。
※ 14 keV以上でのXAFS測定をご希望の場合は、BL07のご利用をお勧めしております。詳細は、ビームライン担当者に問い合わせてください。
ライトル検出器は、全蛍光収量法XAFS測定で使用します。この検出器は、広い検出面を持ったイオンチャンバーです。転換電子収量用アタッチメントの利用もできます。
ライトル型蛍光検出器
・The EXAFS Company 3-grid Fluorescent X-ray Ion Chamber Detector
ライトル検出器(左)、および転換電子収量用アタッチメント(右)
※ 計測系はI1の信号処理系を使用
シリコンドリフト検出器
シリコンドリフト検出器はエネルギー分解能を持つX線検出器で、希薄試料や薄 膜試料に対する蛍光法XAFS用に使用されます。これらの試料においては、散乱X線などのバックグラウンドが高く、目的元素からの蛍光X線だけを分離して 測定するため、高いエネルギー分解能を持った検出器が必要となります。
・Techno AP XSDD50-07 (検出面積50mm2、 7素子型)
・SII-USA Vortex-EX (検出面積50mm2、1素子型)
転換電子収量(Conversion electron yield、 CEY)検出器は、主に、基板上の濃度が高い薄膜試料などのXAFS測定に用いられます。CEY法は蛍光法に比べ、表面敏感性と検出効率が高いという利点を持っています。
・帝国電機 転換電子収量法チャンバー
※ 計測系はI1の信号処理系を使用
※ 他ビームラインとの共用機器(2台)ですので、使用予定のある場合はビームライン担当者に連絡の上でスケジュール調整をおこなってください。
3.5keVよりも低いエネルギーを使用希望される場合は、大気によるX線の減衰に対応するために低エネルギーX線XAFS測定用チャンバーを使用する必要があります。本チャンバーを用いることで、測定試料をHeガス雰囲気下に置くことができ、高調波抑制ミラーとの併用により、2.1 keVからの低エネルギーXAFS測定を行うことが可能となります。本システムでは、転換電子収量(CEY)法、蛍光X線収量法、および透過法での測定が可能です。
低エネルギーX線利用 XAFS計測システムの外観(左)、
および転換電子収量法、蛍光収量法(同時測定)で測定したS K-edge XANESスペクトル
(試料:チオ硫酸ナトリウム,Na2S2O3)(右)
高調波抑制ミラーチャンバー(2枚のNiコート平面ミラーを使用)の外観
封入したペレット試料の温度を室温から1073Kまでの範囲で調節しながら透過XAFS測定をおこなえる高温炉が利用可能です(他BLと共用)。
試料温度を、室温から高温(透過法:1073 K、蛍光法:873K)の間で変化させて、XAFSスペクトルの測定を行うことが可能です(他BLと共用)。また、同時にガス除害設備を使用することにより、水素雰囲気下等でのin situ XAFS測定が可能です。
透過法用石英製加熱炉を使用して、室温(R.T.)から800 ℃(1073 K)まで
測定したBa LⅢ-edge XANESスペクトル(試料:BaTiO3)
上記した高温炉等にガスを流量調整して供給し、ガス漏洩時には緊急停止・バルブ閉止をおこなうための「ガス供給・除害装置」が利用できます。
ガス供給・除害装置で利用できる主なガス種は下記表の通りですが、利用申請前に必ずガス利用に関する条件についてお問い合わせ下さい。また、利用するガスは、原則としてユーザー持ち込みとなります。
ガス供給・除害設備で使用対応可能な代表的な可燃性ガス・支燃性ガス
(2020年3月現在)
|
種類 |
MFC最大流量 |
可燃性ガス |
水素 |
500 |
炭化水素系ガス |
100 |
|
一酸化炭素 |
100 |
|
支燃性ガス |
一酸化窒素 |
100 |
※一般高圧ガス容器10L型専用です |
ガス供給・除害設備
(左:可燃性ガス用キャビネットの概観、右:可燃性ガスキャビネットの内部の様子)
実験ハッチ内のガス取り出し口(1/8インチ スウェージロック接続)
試料温度を15Kから室温の間で変化させてXAFSスペクトルの測定を行うことが可能です。測定手法に、透過法、蛍光X線収量法を利用することが可能です。
・Advanced Research Systems, Inc. DE-202SE/ARS-4HW
温度範囲 | 15 K ~ 室温 |
試料形態 | 粉末(ペレット)、フォイル等 |
試料サイズ | ペレット:Φ10 mm、フォイル 10 × 15 mm2程度まで |
クライオスタット装置の外観(左)、低温(15 K)と室温(298 K)で測定した
Cu K-edgeのEXAFSスペクトルの比較(試料:Cuフォイル)(右)
ビームラインのPCにインストールされた測定ソフトウェアを用いて、
でのXAFS測定が可能です。この測定ソフトウェアでは、計測系電流アンプのゲイン設定や分光器チューニングがすべて自動でおこなわれます。
X線小角散乱(Small Angle X-ray Scattering, SAXS)は、試料にX線を照射して生じる散乱X線のうち、散乱角にして数度以下の領域を測定・解析することにより、試料内に存在する数nm ~ 数百 nmオーダーでの規則構造や粒子サイズ・形状などいった構造情報を取得することができる手法です。
BL11のX線小角散乱装置では、標準的な使用条件である「入射X線エネルギー = 8 keV (1.55 Å)、ビームサイズ0.5 mm × 0.5 mm)で、最大約 1 nm ~ 250 nm までの構造情報を得ることが可能です。
どのような条件(入射エネルギー、試料-検出器間距離、ビームストッパ径)で、どの範囲の構造情報が得られるかは、シミュレーションソフト(※1)等で検討することができます。
※1 https://mas-ka.github.io/xutils/calq/index.html
※ 長さ2m以上の真空パスを用いる際には第2スリットは使用できません
長さ500 mmと1000 mmのアクリル製真空パス(内径200mm)を複数組み合わせることで、500 ~ 2500 mmまでの真空パスを設置することができます。
真空パス内部の検出器側にはフライング式ダイレクトビームストッパーを設置することができます。利用可能なビームストップ径として、
を準備しています。
フライング式ダイレクトビームストッパー(左からφ3mm, φ5mm, φ8mm)
XAFS用試料ステージをSAXSの透過配置用試料ステージとして用いることができます。ステージの性能諸元はXAFS測定装置を参照してください。
微小角反射(Grazing Incidence angle, GI)小角X線散乱測定用に、RxRyスイベルステージを搭載した試料ステージを準備しています。
中央にX線透過用の穴(φ2mm)が開いたアルミプレート(50 mm×50 mm)を試料ホルダーとして用意しています。板状および薄片状試料は、このプレートに粘着テープで貼り付ける等して測定することができます。また、溶液試料を封入したX線用石英キャピラリをプレートに貼り付けて測定することも可能です。
溶液フローセルや試料加熱装置を持ち込んで in situ 測定を計画している場合には、それらの固定等について事前にビームライン担当者と打合せをおこなう必要があります。
入射X線強度用イオンチャンバー(I0)
透過X線強度用イオンチャンバー(I1)
試料ホルダーと真空パスの間に設置され、透過X線強度測定用に用いることができます。
シリコンPINフォトダイオード
8mm径のダイレクトビームストッパーに組み込まれたX線PINダイオード検出器で、真空パス内の検出器側に設置され、透過X線強度測定用に用いることができます。
X線ピクセルアレイ検出器 (DECTRIS PILATUS300K)
検出器ステージ
最大200Hzでの時分割測定および外部トリガーによる同期測定が可能な測定制御ソフトウェアを用意しています。このソフトウェアでは、測定開始時の分光器チューニング・I0およびI1の積分強度・シャッター制御が自動で同期しておこなわれます。
測定された散乱像はTIFFファイルとして保存され、FIT2D(※2)等による積分・一次元化といった解析が可能です。
※2 http://www.esrf.eu/computing/scientific/FIT2D/