ユーザーインタビュー

今回は、株式会社コベルコ科研の稲葉様と佐賀県果樹試験場の納富様のお二人にお話を伺いました。

Q1  日頃、どのような研究をされていますか。

稲葉様 顧客から頂戴した分析依頼への対応を行っておりますが、高度化するニーズに応じるべく、その場測定や適用領域拡大などの技術開発にも並行して取り組んでおります。社内の役割分担上、放射光利用手法をベースにした課題解決から検討を行いますが、必要に応じて保有する実験室型装置の相補的な利活用も行っております。

納冨様 果樹試験場は4つの研究担当に分かれていますが、私は品種開発研究担当に所属し、佐賀県オリジナルブランドづくりを目指して、「おいしい・作りやすい・収益向上」をキーワードにカンキツ類の新品種を開発しています。自分が主に担当している分野は香酸カンキツ類(ユズやスダチなどの仲間)に含まれる機能性成分の分析、放射線育種による効率的な新品種の作出法の検討などです。

 Q2  当研究センターご利用のきっかけを教えてください。

稲葉様 ビームライン(県有BL12)設計立上げの際、当時協力関係にあった大学とともにお手伝いさせていただいたことがきっかけです。本格的な利用に至るにはしばらく時間が掛かりましたが、近年二次電池材料への取組み(ワンストップ評価)を進めるなかで、特に軟X線領域での測定での利用が多くなりました。

納冨様 平成19年に九州シンクロトロン光研究センターが開所し、当時の係長がカンキツ育種への利用を検討し始めたのがきっかけです。それまでは果樹における放射線育種はガンマ線でいくらか取り組まれた程度で、重イオンビームやシンクロトロン光などを果樹に利用する取り組みは非常に珍しかったと思います。実際の試験では、数年かけて新品種作出に最適な照射線量を決定するところからスタートしたと聞いています。

Q3 シンクロトロン放射光を使われた感想を測定方法など含めて教えてください。

稲葉様 強力な光源を用いた特徴的な分析手法が利用でき、実験室型装置では得難い知見が得られる点が非常に魅力です。その場実験との親和性が高く、状態・局所構造情報が取得可能な硬X線領域のXAFSは当社業務上非常に利用価値が高いと感じています。一方で実験室型装置と比較して測定機会や実施時期が限定的になる点は否めません。「ツボにはまった」成果を得るには、試料準備や利用計画といった十分な下準備と得られたデータの解釈・吟味が必要になると考えています。時間が掛かるケースも多いことから、顧客や共同研究者に施設や手法の内容・状況を十分説明し、正しくご理解いただくことも重要と考えています。

納冨様 放射線といえばレントゲンくらいしか知らなかったので、見るものすべてが新鮮でした。回折などに利用するシンクロトロン光が点状に集められて利用されるのに対し、植物の育種で使うシンクロトロン光は線状に出てくるというのも初めて知り、いろいろ勉強になりました。

Q4 貴機関におけるシンクロトロン光放射光利用の位置付けを教えてください。

稲葉様 基本的には他の分析手法と同様の「顧客課題解決のための分析ツール」のひとつであると考えています。以前は強力だが対象が限定的な「ピンポイントの研究ツール」であるニュアンスが強かったですが、XAFSやXRDを筆頭に各施設からの公開成果の増加、利用スキームの改善・多様化および当社経験の蓄積などが進み、広範な対象において実験室型装置と同レベルでの利用・評価・相補解析ができるようになってきました。しかしながら施設側のご尽力による先端的な手法開発も歩みをゆるめることなく進められていることから、今後も「分析ツール」と「研究ツール」の両面での利活用を検討していきたいと考えております。

納冨様 放射線突然変異の誘発による効率的な新品種育成のため利用しています。果樹では事例がほとんどないのですが、花や菌の世界では近年放射線突然変異により新しい品種がたくさん出てきているので、今後生育が進むにつれていい結果が出てくるのを期待しています。

Q5 当研究センターへのご要望、今後の抱負などお聞かせください。

稲葉様 当社の業務形態上、急ぎ・飛び込みでの利用打診や従来経験の無い測定対象での測定打診などが多くなっており、無理なお願いばかりしている点については恐縮しております。一方で、いつも最善を尽くしたご対応を提案いただいている点について感謝いたしております。測定機会・実施時期は常に継続的な課題とは思いますが、今後も迅速対応についてご検討いただけると幸いです(SPring-8等で実施されている測定代行も一案かと考えております)。当社としては放射光利用を拡大するひとつの「窓口」、および施設側(シーズホルダ)と潜在的ユーザ(ニーズホルダ)を繋ぐ「橋渡し」としての役割を果たしていきたいと考えておりますので、引き続きのご協力を賜れますと幸いです。よろしくお願いいたします。

納冨様 カンキツでは新品種を作るのにおよそ20年かかると言われます。シンクロトロン光を照射しても、実際に結果が出るまでにかなりの時間を要するので、なかなかいい報告が出来ないことを心苦しく思っております。過去に照射した植物体は場内で育成中ですので、結果が出るまでもうしばらくお待ちくださいますようお願いします。
今後もシンクロトロン光をはじめとする様々な技術を利用して、新品種開発の大きな流れの中で少しでも役に立てればと思っています。

研究を進める上でのスタンスやポリシーなど、一言お願いします

稲葉様 できるだけ多くの方々のご意見を伺うことと、現状を踏まえたうえで新しい提案ができないか知恵を絞ることを基本スタンスとしています。「So Far, So Good... So What!」(アメリカのヘビーメタルバンドMegadethのアルバムタイトル。「これまではそこそこ順調だ…だから何だ」の意)という姿勢でこれからも前向きに業務に取り組んでいきたいと考えております。

納冨様 「消費者に喜ばれるモノ」づくりが大事であるとよく言われますが、同時に「生産する農業者に喜ばれるモノ」であることが重要と考えており、どちらにも喜ばれるモノを作りたいと思っています。

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