随想

 2015年の年末から年始にかけての正月休みは、私的な用事がありニューヨーク市のマンハッタンで過ごしました。30数年前、近郊のロングアイランドに1年間滞在したことがあり、今回、ニューヨークが変化した様子を見聞きすることが楽しみでした。ここではその感想を記してみたいと思います。 

 成田発のニューヨーク直行便は、昨年11月に起きたパリ同時多発テロ事件の影響もあってか比較的空いておりJFK空港での入国審査もすぐに済みましたが、やはり日本からの入国は一時的に減っているとのことでした。空港からマンハッタンまで車で1時間弱、イースト川に架かるクイーンズボロ橋を渡りマンハッタンに着きました。この橋の南側にあるクイーンズミッドタウントンネルを抜けてもマンハッタンに出ますが、30数年前はトンネル出入口のゲートにある直径数十cmのカゴを目掛けて車内からトークン(代用コイン)を投げ込む必要がありました。外しそうになったりして結構ドキドキ感がありました。今はE-ZPass(ETC)で通過できますが、混雑ぶりは変わらないそうです。

 マンハッタンはクリスマス休暇の家族連れ観光客で溢れていました。街を移動しながら気がついたのは、治安が大変良くなったことです。地下鉄やバスは日本と同レベルの警戒感で安心して利用でき、しかも大変便利です。次に、日本料理店(寿司、焼鳥、ラーメンなど)がどこにでもあり、日本人以外のお客さんで満席、しかもほとんどの方が器用にお箸を使っていたことです。そしてこれは不思議な印象なのですが、アメリカの肥満率増加を示す統計データにも拘らず、肥満体の人がかなり減少しているように思いました(観光客が多かったためかも知れませんね)。

 さらに、そのような外面的変化に加えて、サービス業などでICT利用が想像以上に浸透していることに目を見張りました。ICT機器の電力消費と引き換えにサービスを提供する側と受ける側の両者の実作業が「同時」に軽減され、さらに両者が新たな付加価値を得ることに成功していると思われるのです。これまでの経験から「ICT利用でオフィスの事務効率は向上したが、接客サービスでは両者が納得出来るような御利益は感じられない」と思っていた私には目からうろこでした。とくにアメリカは Do it yourself の国ですからICT化は付加価値向上に繋がっているのだと思います。例えば最近急速に事業を伸ばしている配車システムのUBERはニューヨークでも使われています。これは、利用者が現在地と目的地をスマートフォンのUBERアプリ(地図)上で指定すれば、最も近い空車が現在地に移動する状況と待ち時間が表示され、利用者を目的地に運ぶシステムです。決済はクレジットカードで行えます。つまり、詳細地図(知識基盤)と測位システム(技術基盤)をスマートフォンを端末とする情報処理システムに載せて、入力データを解析、処理してサービス提供を行う大変便利な仕組みです(測位システムはGPSです)。もちろんUBERの事業コンセプトは新たなサービスの創出を示唆しています。昨年のニュースですが、ドイツの自動車メーカーは共同で地図会社を買収したそうです。

 また、マンハッタンの摩天楼では、ビルのライトアップに従来の放電灯に代わってLED(Light Emitting Diode)が使われ、夜の景観を引き立てていました。LEDは、2014年度ノーベル物理学賞(赤崎勇、天野浩、中村修二の3先生が受賞)の受賞対象になった発光素子です。放電灯よりも小型、長寿命、高輝度、省エネ、しかも調光と赤、緑、青などの混色が容易に出来るなど、画期的な照明機能を有しています。日本でも建造物などのLEDによるライトアップは珍しくありませんが、例えばエンパイアステートビルのライトアップシステムは、全てのLEDをデジタル制御してフルカラーで色彩、色調、ライトアップパターンを操るなどLEDの機能を存分に活用しています。ラジオの音楽や打ち上げ花火に同期させたり、国や州の記念日を祝うライトアップを行うなど、地域交流、エンタメ性、観光まちづくりの実現に貢献しているようです。さらに、より汎用性と拡張性を持つライトアップシステムが世界各地の街路、橋梁、公園等にも適用されつつあり、住民の安全確保、地域参加、エンタメ性などへの効果が期待されています。我々の身近な環境でも、もっとスマートなライトアップを楽しめるようになれば良いと思います。なお、当研究センターではLEDの長寿命化等に関する研究課題の利用支援も行っています。

 ところで、大晦日のマンハッタンと言えば恒例のタイムズスクェアのカウントダウンが有名です。当日午後、現場に出掛けましたが、既に身動きが取れない状況になっていました。車道上の街区毎に設けられた満員の柵の中で深夜まで待たねばならず、トイレ等で柵外に出れば再入場は難しいためテレビで見ることにしました。これでは日本で見るのと同じですね。 

 無事年が明けて2016年を迎え、帰国の途につきました。機上では、ニューヨーク滞在で得た知見やヒントも参考に、一ヶ月後に迫った当研究センターの10周年記念行事でのプレゼン内容を考え(文字通り機上の空論です)、また、初詣のニュースを見ながら今年も良い年でありますようにと空から祈念した次第です。 

2016年3月

公益財団法人佐賀県地域産業支援センター 九州シンクロトロン光研究センター
〒841-0005 佐賀県鳥栖市弥生が丘8丁目7番地 TEL:0942-83-5017 FAX:0942-83-5196

(C)SAGA-LS.All Rights Reserved.