ユーザーインタビュー

●嘉数 先生― profile ―

1985年 京都大学工学部電気工学科 卒業
1990年 京都大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程 単位取得退学
1990年 日本電信電話株式会社 基礎研究所(現在の物性科学基礎研究所)
2011年10月1日 佐賀大学大学院工学系研究科電気電子工学専攻 教授
(パワーエレクトロニクス講座)
2002年7月〜2003年7月 独・ウルム大学 電子デバイス回路学科・客員研究員
2007年2月〜2007年3月 パリ大学(第13)工学部 材料工学専攻・招聘教授
ダイヤモンド等のワイドギャップ半導体を使ったパワー電子素子を目指している

 

●坂本 主任研究員― profile ―

1996年 九州大学大学院応用原子核工学専攻修了
1997年 九州大学総合理工学研究院材料開発工学専攻博士課程中退
1997年 九州大学工学部 助手
1998年 九州大学総合理工学研究院 助手
2002年 株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンに入社
2006年 日本核燃料開発株式会社に出向
2009年 九州大学にて学位を取得(工学博士)
軽水炉核燃料の研究・開発に取り組んでいる

  

嘉数 教授:ダイヤモンドの研究をしています。ダイヤモンドは宝石として知られていますが、物理的には「半導体」なので、もし、これを電力の制御に使えるようになると、現在の1000倍もエネルギーの効率を上げることができるのです。存在する物質の中でダイヤモンドは最も優れているので、私はダイヤモンドを「究極の半導体」と呼んでいます。
私は企業の研究所で10年間ほど、この研究に取り組み、その後2年半前に佐賀大学に移りました。佐賀大学でも、ダイヤモンド・トランジスタ(素子)が完成寸前まで来ているのです。壊れないダイヤモンド・トランジスタの技術を持っているのは、世界的にも私たちだけです。
ところで、トランジスタはダイヤモンド結晶の中に作ります。理科で習ったようにダイヤモンド結晶は立方体で、中には炭素原子が規則的に並んでいます。ところが、現実の結晶は、結晶欠陥といって原子配列の規則性がずれていたり、不純物と呼ばれる炭素以外の原子が入ったりしています。これらは非常に微量ですが、私たちの目的とするトランジスタの動作にとても悪い影響を与えます。
よく、マスコミの方に「女性が好む天然のダイヤモンドと先生のダイヤモンドとどちらがいいのですか?」と聞かれます。私も研究用に幾つか天然ダイヤモンドを持っていますが、私たちが研究室で作るダイヤモンドの方がずっと優れていますよ。

 坂本 主任研究員:私の所属する日本核燃料開発株式会社(NFD)は、原子力発電所で使われる原子炉燃料や原子炉の構造物の材料開発や性能評価を行っています。原子力発電所で使用された材料の一部は放射能を持っていますので、NFDはそれら材料を取り扱える特別な施設もあり、使用される前から使用された後までの性能評価が可能です。原子炉ではウランの酸化物をジルコニウム合金(燃料被覆管と呼びます)に封入して使用しますが、私の主な研究はこの燃料被覆管の安全性向上に関するものです。燃料被覆管が原子炉内で使用される場合には長期間にわたり高温水・水蒸気に曝されるため、母材金属であるジルコニウムが徐々に腐食して、腐食反応(酸化反応)で発生する水素の一部が合金に取り込まれます。取り込まれた水素の一部は機械的に脆い水素化物を形成してしまうため、燃料被覆管の安全性向上には水素の取り込みを低減する必要があります。現在はこの水素の取り組みのメカニズムの解明に取り組んでいますが、SAGA-LSではシンクロトロン放射光を利用して水素の取り込みで重要となる表面酸化膜の特性評価を実施しています。具体的にはジルコニウムに微量添加されている添加元素(鉄、クロム、ニッケル、ニオブ等)が酸化膜内でどのように化学状態が変化していくのかをXAFS測定で調べています。

嘉数 教授: 上でお話ししたように、トランジスタに使うことのできるダイヤモンドの完全結晶を作るために、シンクロトロン放射光を使って、私たちはダイヤモンド・トランジスタを作る研究と同時に、ダイヤモンド結晶の欠陥や不純物をどのように減らすかという研究をしています。このような実験は曲りなりに大学の実験室でもできますが、シンクロトロン放射光では10分程度でできてしまう実験が、大学では数日かかってしまいます。またシンクロトロン放射光は平行度が極めて高いので、結晶の中の力によってできる百分の一度程度の角度の曲りも検出でき、結晶の中の様々な情報を取り出すことができます。

 坂本 主任研究員: 私が実施しているXAFS測定はシンクロトロン放射光を利用する必要があります。また、シンクロトロン放射光を利用することで化学状態だけでなく高輝度X線を利用したXRDや光電子分光分析等により他の様々な特性についても効率的に調べることが可能となります。実験室系の測定では様々な機器や施設を跨いで実施しなくてはならない場合が多いのですが、シンクロトロン施設では一か所で多種の分析が可能で、かつそれらを複合的に組み合わせることで新たなアプローチが可能となることが大きなメリットだと思います。また、スタッフの方々が多種の分析に詳しく一つの測定法に拘らずに柔軟に最適な手法についてアイデアを出していただけるメリットもあります。

嘉数 教授: 私たちはビームラインBL09Aで、X線トポグラフィーの測定をしています。
皆さんはレントゲンのX線を人体に当てて、透過した像を見る原理を知っていると思います。体の中の悪い部分が暗く映って、病気を発見しますね。X線トポグラフィーでは、ダイヤモンド結晶にX線を当てると、欠陥が暗い部分として像に写るのです。もちろん物理的に厳密にいうと、結晶からの回折を撮像したものですが。

 坂本 主任研究員: 主にXAFS測定を行っており、遷移金属(鉄、クロム、ニッケル)ではBL11を、ニオブやジルコニウムの場合にはBL07を利用しています。SAGA-LSでは、BL07とBL11(とBL12)で異なるエネルギー帯に合わせて測定が可能となるので質の良いデータを得ることが出来ます。また、両ビームライン共に検出系や操作系が随時改良されていて、使い勝手もどんどん良くなってきています。今後も測定の高度化や効率化を期待しています。

嘉数 教授: ほぼ毎月のようにSAGA-LSを使わせていただきますが、技術職員の方も事務職員の方も大変親切で、とても満足しています。技術職員の方々は第一線の研究者なので、本来の実験のサポートのレベルを遥かに越えて、熱いディスカッションを闘わせながら、共同研究者のように指導いただいており、予想外の成果も頻繁に出て、驚きの連続です。研究室からできるだけ多くの学生達を連れていくのですが皆、大学とは違う超一流の実験設備で、真剣に研究に取り組んでいます。今年の4年生たちは海外の国際会議で発表する予定ですし、もともとシンクロトロンやX線トポグラフィーの専門外であった私も、海外から国際会議での招待講演を依頼されるようになりました。

 坂本 主任研究員: いつも柔軟に日程調整に応じていただいているため、遠方からの利用でも効率的に測定ができています。ご協力ありがとうございます。
今後の期待としては、諸手続きの電子化を挙げされていただきます。現在、一部の書類については郵送や持ち込みが必要となっておりますが、手続きの効率化を図っていただけるとより測定に集中できると思います。


嘉数 教授: 縁があって、佐賀大学に呼んでいただき赴任しましたが、佐賀県は比較的、農業、食品製造業が盛んですが、新しい産業を興さなければいけないと思います。
今は、ダイヤモンド・トランジスタを地元で実用化して、新しい半導体産業にしたいと願っていますが、シンクロトロンは「新しい光」ですので、様々な起業や産業の発展に寄与できるのではないかと模索しています。SAGA−LSではサイエンスの研究も行われていますね。私は、そのような研究の中から近い将来、ノーベル賞が生まれると期待しています。私もサイエンスの研究テーマもしているのですが、サイエンスと並行してテクノロジーの研究ももっともっと増やしていきたいですね。今のX線トポグラフィー研究は順調に進んでいますが、これをスタートとして、もっとビックなテクノロジー研究ができないか、知恵を絞っています。また佐賀大学としても、世界に有数な佐賀のシンクロトロンを、新たな地元での産業応用や大学教育に利用する道を探っています。
今後ともよろしくお願いいたします。

 坂本 主任研究員: 原子力発電に関する技術は一層の安全性向上に取り組み皆様のご理解を得ていく必要があります。私も微力ながら材料開発を通じて安全性向上に貢献いたしたいと思います。


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