ユーザーインタビュー

当研究センターには、企業や大学など、さまざまな機関から研究者・技術者の皆さんが実験に来所されています。今回は、長年、センターをお使い頂いている企業のユーザーお二人にお話を伺いました。

    高橋さん:弊社はトヨタ自動車をはじめとしたトヨタグループの中央研究所として1960年に設立された会社です。研究分野はパワートレーン、環境、エネルギー、材料、エレクトロニクス等多岐に渡っています。主な研究成果として、低弾性率化と高強度化を両立させた世界初の合金ゴムメタルや、低摩擦・高耐摩耗性を持つDLC-Siコーティング技術の開発などが挙げられます。また最近では、太陽光を利用してCO2と水から有機物を直接合成する人工光合成の実証に、世界で初めて成功しました。自動車に関わる研究はもちろんのこと、未踏の科学分野へ挑戦し続けています。

    金子さん:当社は1909年に我が国初の近代ゴム工場として創業しました。1913年に国産第1号自動車用タイヤを生産し、現在はDUNLOPやFALKENブランドのタイヤを中心に、制振ダンパーや医療用ゴム、人工芝等の産業品の開発と製造・販売を行っています。
当社は、広く地域・社会に貢献し期待されるグローバル企業として、快適で魅力ある新しい生活価値を創出し続ける企業を目指し低燃費タイヤや石油外天然資源タイヤなど地球環境に配慮した高性能・高品質な製品開発に取り組んでいる企業です。

 


    高橋さん:弊社は、兵庫県にある大型放射光施設SPring-8に専用ビームラインを建設するなど、放射光を利用した研究を精力的に行っており、日頃から放射光研究に携わる多くの研究者と共同研究、情報交換を行っています。九州シンクロトロン光研究センターについては建設段階から注目し、開所された翌年の2007年より放射光実験をさせて頂いております。

    金子さん:当社は2001年より大型放射光研究施設SPring-8の活用を開始し、硬X線を用いた様々な手法を駆使し、分子レベルからマイクロメータスケールにおける複雑なゴム内部構造の解析を行ってきました。その成果を活かし、2011年には低燃費性能最高グレード「AAA」の低燃費タイヤの開発などを行っています。

しかし、タイヤに求められる性能は低燃費性能だけではありません。高グリップ性能や高耐久性能を有するタイヤを開発するためのゴム材料の開発が強く求められています。そのためには、これまでのゴム内部の構造解析だけでなくタイヤを構成するポリマーや有機薬品などの化学状態変化を精度よく解析する必要がありました。そこで、シンクロトロン放射光を用いた軟X線分析が有効であると考えました。特に1年に3回の課題募集があり産業利用が行いやすく、中規模シンクロトロンの中でも輝度が高い九州シンクロトロン光研究センターの利用を開始しました。BL担当者との技術相談や実験サポート体制も魅力の一つです。

 


    高橋さん:軟X線XAFSとX線光電子分光による測定が可能なBL12をよく利用させて頂いております。上述の通り、自動車材料を扱う弊社では分析対象が多種多様で、これまで金属、半導体、高分子、触媒、電池材料等を、電子収量法によるNEXAFSやPESにより分析させて頂きました。特に炭素や窒素、酸素などの軽元素はNEXAFSで高感度に測定でき、とてもSN比の高い吸収スペクトルを得ることができます。軟X線を用いた手法は表面に敏感ですので、試料や装置の汚染が分析データに影響を及ぼすケースが多々あります。しかし、BL12では光学系からエンドステーション、試料を扱う器具に至るまで、徹底した管理が行われているおかげで、共用の設備とは思えないほどコンタミの影響が少なく、質の高いデータを得ることができます。

    金子さん:BL12で NEXAFS(Near Edge X-ray Absorption Fine Structure)測定を行っています。タイヤ用ゴムはポリマーに様々な材料が添加され性能を産み出しています。さらに、タイヤは使用中に熱、酸素、オゾン、UVなど様々な環境に曝されているため化学的な変化が起こります。この現象を捉えるためにNEXAFS法を用いてC K-edgeのスペクトル計測からゴム表面の化学変化の解析を行っています。
一般的に、C K-edgeの測定は、真空中の不純物による光学系のコンタミネーションから測定することが困難であったり、測定する度にスペクトル形状が変化したりしますが、BL12は良く整備され、常に最高のデータが得られています。また、一度に多くの試料を入れることができ効率良く測定できるので、製品開発に応用でき大変助かっています。

 


    高橋さん:新しい製品につながる技術の開発や、高品質化を図る上で分析は欠かせません。とりわけシンクロトロン光は、汎用的な分析装置で見えなかったものが見えるようになるなど、これまでに多くの疑問を解決してくれました。しかし、企業にとって"スピード"はとても重要で、課題申請から審査、採択、実験に至るまでに長い時間を要する放射光実験では、分析対象が限られてしまうのも事実です。特に産業利用が中心となるビームラインにおいては、提出書類の簡略化や手続きの短縮化をご検討頂ければ幸いに存じます。

    金子さん:先にも述べましたが、タイヤ用ゴムは様々な材料からなる複雑系であり、古くから研究されていますが、まだまだ未解明な部分が多く残っています。そのため、シンクロトロン放射光X線分析はラボ分析装置等では分からなかった現象を明らかにすることができ、製品開発する上で潜在的に抱えていた課題の解決に非常に有力です。一方、シンクロトロン放射光を使用できる時間に制限があるため、ラボ分析装置で十分な予備検討を行って実験に挑んでいます。しかし、実験した際に思わぬ結果が出てサンプルを再調整しなくてはならないこともあり、測定が数か月後になってしまうことがあります。そのため、企業としては如何に製品開発や研究開発のスパンに合わせ実験を行うことができるのかが悩みどころです。

 


    高橋さん:安定的で質の高い光を利用できる有数の放射光施設だと思います。特にBL12はユーザータイムがすぐに埋まってしまうほどで、課題申請はまるで人気チケットの予約のようです。また、県有ビームラインには知識や経験が豊富な専門の研究者がいらっしゃるので、測定や解析に関してご教示頂くことができ、とても心強いです。鳥栖は福岡空港や博多駅からのアクセスがよく、自宅がある名古屋からの長距離移動にも思いのほか便利です。これまで佐賀県は縁遠く、訪れる機会に恵まれませんでしたが、今では年に何度も足を運ぶ馴染みの場所になりました。毎回、期待通りかそれ以上のデータを持ち帰ることができるのは、光源の良さはさることながら、貴センタースタッフの皆さまの温かいお力添えがあってのことと、心より感謝致しております。この場をお借りして御礼申し上げます。

    金子さん:事務手続きから技術的な内容までご相談等もしやすく、皆様がいつも丁寧に対応して下さり、いつもありがたく感じております。また講習会やセミナーなど積極的に行われ情報発信されているため、産業界にとってはシンクロトロン放射光の有用性の理解につながっています。今後も、先端技術をどんどん導入され、より使いやすいセンターにしていってくださることを期待しております。


  

 

 

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